受験勉強レポート

I.H慶応大学経済学部卒 2003年秋田大学医学部進学



はじめに  私は、2003年度秋田大学医学部に合格したI.Hと申します。巌丈志摩の先生方のご指導のお陰で、念願の医学部合格を果たすことが出来ました。謹んで感謝の気持ちを申し上げます。 私は2年間巌丈志摩にお世話になっておりましたので、その間の自分の体験をもとに、合格体験記を書きたいと思います。この体験記が、ささやかながら巌丈志摩への恩返しとなれば、またこれから巌丈志摩で勉強する生徒への力添えとなれば幸甚です。

塾生生活
私が巌丈志摩に入塾したのは2001年、25歳の時です。社会人を経験してから、医師になりたいと思い、医学部を目指して受験勉強を始めました。入塾した当時は、数学の2次曲線の平行移動すら分からず(高校1年の1学期に習います)、英語は中学生の時に教わる極めて幼稚な基本的なことまで忘れている有様でした。高校を卒業して7年も経っている上、大学には推薦で入ったので受験勉強を経験していなかったのです。入塾当初のセンター模試の偏差値は、英語と現代文以外は50以下だったように思います。そこから2年、巌丈志摩の勉強メニューをこなし、秋田大学医学部に前期試験で合格することが出来ました。

勉強方法
私は2001年度と2002年度の2年間巌丈志摩に在籍していたのですが、初年度は勉強量が不足しており、センター試験は7割を切ってしまったため、足切りされてしまいます。その時の反省から、2年目は以下の点に気を付けながら勉強を進めました。

1.心構え
1)目標を明確にする
@志望校を設定する
まず志望校を設定しましょう。その際、○○大学××学科志望といった具体的なところまで決めることが大切です。具体的な目標はモチベーションを維持するのに役立ちます。また、4月に入る前に、志望校を設定するだけでなく、過去問研究を始めることをお勧めします。最初は理解できなくても、問題に目を通すだけでも勉強に対する姿勢が違ってきますし、どのような勉強を優先して行うべきかが分かります。
A志望校に絶対合格するという信念を持つ
 日々他者に対してポジティブな態度をとり、ポジティブな言葉のみを口にし、ポジティブな「合格、そしてその後の生活」への想像を働かせることは、受験で成功するのみならず、人生で成功するために大切なことです。そして、前向きな考えにプラスして信念を持つことは受験を乗り切るために重要なことです。自信のない人はことある毎に「どうせ勉強しても受かんないよ」「自分はアホだから」という前置きをして、実際に失敗したときの理由作りをします。しかし、これでは日々自分が失敗するイメージトレーニングをしているようなものです。「自分は必ず合格する」と常に考え行動することで、積極的に勉強に取り組み、より自分を成長させることができると思います。浪人時代、私は毎日のように「医学部に合格する」と周囲にふれ回っていました。周囲に宣言することで自分を追い込むという意図もありましたが、最も大きな効果は、言っているうちにより強く「自分は必ず合格する」と思うようになったことです。そう思えるようになると、自然と気持ちに余裕が出てきて、成績も伸びていきました。 また、逆境を乗り切るためにも「必ず合格する」という信念を持つことが大切です。私は2/10〜3/10まで盲腸と腸閉塞で入院していました。2度開腹手術をし、その後2月の半ばまで、鼻から腸までカテーテルを入れる等、計5本の管が身体に刺さった状態でした。歩くどころか自力で起きあがることも出来ません。試験直前に勉強することができない上、受験会場に行けるかどうかも分からないという絶望的な状況でした。その時に自分を助けてくれたのが信念です。当時は「自分は必ず合格する」と信じていたので、「合格するのだから病気も試験直前には治るはずだ」と考え、試験日までリハビリをしつつ、出来る限りの勉強をしました。そして、試験の直前になんとか医師のgoサインが出て、受験することができました(依然絶食状態ではありましたが)。今から考えるとかなり無茶苦茶なことを考えていたと思いますが、「合格する」という信念が無ければ、病気に負けて試験場にすら辿り着けなかったでしょう。受験にはメンタル的な要素が深く関わっています。ポジティブな発想と、何より合格するという信念を持ち続けることが受験で成功するために大切なことだと思います。
2)先生・先輩の教えに素直に従う。
先生・先輩の教えには、最短距離で合格するための秘訣が詰まっています。参考書の使い方から生活習慣まで、教えをいただいたら貪欲に自分の勉強スタイルに取り入れていきましょう。食わず嫌いではなく、言われたら素直に取り入れてみることが大切です。ただし、受け身なだけではいけません。そのアドバイスをより活かすために、先生に再度相談したり、文献を探してみるなどして、自分をより高めることのできる方法を模索していくことが大切です。なお、先生に教えを乞う時は、1度は自分で調べた上で、それでもどうしても分からないことを、問題点を明確にして(5W1H)聞きにいくようにしましょう。先生に対する礼儀であり、また論点を整理することで理解しやすくなるという効果もあります。
3)効率的に勉強する
@睡眠時間をとる
「眠くなったらすぐに机に突っ伏す」これは松田システムとして巌丈では有名です。眠い中で勉強を続けるより、短い時間でも集中して勉強した方が、頭に残る量は多いと思います。私は浪人時代は予備校で1時間は昼寝に充てていました。浅野先生は「夜は十分に睡眠時間をとるように」とおっしゃっていますが、私は夜は最低でも6時間半は睡眠をとりました。余談ですが、精神医学者であるスティックゴールドは『新しい知識や技法を身につけるためには、覚えたその日に6時間以上眠ることが欠かせない』と言っています。1度憶えたことを出来るだけ長く保持し、勉強時間を有効活用するためにも、十分な睡眠時間をとりましょう。
A集中する
「同じ教科ばかりで飽きてきたら、教科を変えて勉強する」「お腹が空いて集中出来なくなったらチョコレートを食べる」これは集中して勉強するためのコツです。特に後者は血糖値を上げて脳に血流を送る効果があります。トータルの勉強時間が多いことは大切ですが、その中でどれだけ集中できたかということも大切です。また、1日の集中力を高めるためにも、「朝食をしっかり食べる」「規則正しい生活を送る」ことが必要です。受験を乗り切るために、勉強だけでなく、勉強を効率的に行えるように生活環境を整えることにも気を配りましょう。
B勉強時間を作る
「勉強時間の不足が、成績が上がらない原因の大半を占める」と本で読んだことがあります。実際、勉強時間はいくらあっても足りません。「塾では携帯でメールを打たない」「私語は最小限に抑える」ことで時間を節約するのは当然のこととして、足りない時間を増やすためにも、通学・食事・入浴等の時間も勉強に充てようという意気込みが大切です。特に、細切れの時間を勉強に活かすことが出来ると勉強効率がぐっと上がります。細切れの時間の活かし方として僕がお勧めするのは暗唱です。僕はよく英語の文章や数学の和積の公式等を憶え、頭の中もしくは声に出して暗唱していました。特に英文でお勧めなのは速読英単語上級編です。構文と単語を同時に憶えられる上に、文章のまま頭に入れるので、忘れにくいという利点があります。
4)自分の状態を客観的に把握する
@学業面
 「現在の自分の実力を正確に把握すること」は受験を成功させるために極めて重要です。そのためには模試の成績や、日々の授業の演習の結果を参照するとよいでしょう。その上で、「何が自分にとって確実に実力を伸ばす方法かを見極める」ことが大切です。どのような方法があるかについては、先生からアドバイスをいただいたり、合格体験記を参考にしたり、各種勉強法についての本を読むといいでしょう。私が浪人時代に参考にした本を記末に記しますので、参考にしていただければと思います。
A生活面
 「今日は勉強ののりが悪い」「今日はすらすら問題が解ける」といったことが皆さんにもあると思います。人間誰しも好不調の波があると思いますが、好調をなるべく維持・持続させ、不調の時期をなるべく短くすることも効率的な勉強をする上で大切です。睡眠不足は主要な不調の原因ですが、ストレスがたまってきた時も不調に陥りやすくなります。その時は思い切って勉強をやめて気分転換をするのもいいかもしれません。早い時期から「どのような状態が自分にとって好・不調であるか」を把握し、「どのようにすると好調を維持でき、また不調から早く脱出できるか」を自分の中でシステムとして確立できると、受験を有利に進められます。受験勉強はただ問題を解くことにだけ気を遣えばいいものではなく、精神面や生活面を含めた総合的な観点から勉強計画を立てる必要があります。<1.3)A>でも述べましたが、「いかに受験勉強のしやすいコンディションや環境をつくるか」という生活習慣の身につけ方にも気をつけましょう。
5)困難分割
 大きな問題が生じた時、いっぺんに解決しようとするのではなく、小さな問題に分割して1つ1つ解決していくことが大切です。問題が大きすぎる場合、一度に解決しようとすると、焦って手順を間違えてしまって上手くいかないことがあります。非道いときには絶望して諦めてしまう場合もあります。そういった時に問題を客観的に分析して、解決できるところから順々に片づけていくことで問題を処理することが出来ます。例えば、受験勉強をしていると、「勉強しても思うように成績が伸びない」「このままでは志望校に受からないのではないか」といった悩みが出てくると思います。その際に、「成績が伸びないから志望校を落とそう」とすぐに結論づけるのではなく、「なぜ成績が伸びないのか」「どの分野が自分の足を引っ張っているのか」と分析することが大切です。「この科目のこの分野で点を落としている」「この科目の勉強法に問題があるのでは」と問題点を細かく分けることが出来ればしめたものです。それらの問題点を1つ1つ克服することで志望校に近づくことが出来るでしょう。
2.具体的な勉強の進め方
1)受験勉強のコツ
 勉強する上で大切なことは、「いかに試験に出そうなところを引っ張り出しマスターするか」という勉強の仕方と、「いかに試験に出そうな内容の記憶を増やすか」という学習能力の上げ方です。この2点について少し詳しく説明します。
@勉強の仕方
 「試験範囲の2割から試験問題の8割が出る」勉強法の本を読むとよく目にする言葉だと思います。試験で強調構文には毎回出会うにもかかわらず、有名な「くじらの公式」には滅多にお目にかかれないように、分野ごとの出題頻度には明確な差があります。どの問題の出題頻度が高いかを把握することは、効率よく勉強するために必要なことです。出題頻度の高い問題は2つに分類されます。
○a一般的に出題頻度の高い問題
○b志望校で出題頻度の高い問題
 ○aについては授業や参考書から把握できるでしょう。しかし、○bについては過去問から傾向を分析する必要があります。解法をマスターするには時間がかかるので、なるべく早い段階で志望校を決め、過去問を入手しましょう。先生に過去問を見てもらい、どのような問題を練習すべきかアドバイスをもらうのも一つの方法です。
 ここで重要なのは出題頻度の高い問題を優先的にこなすことですが、受験生の中には高度な知識やマニアックな問題にはまりこんでしまう人がいます。「自分はこんなことも知ってるんだぜ」的な優越感に浸れるという利点はありますが、試験に滅多に出ないので成績に反映しない上、理解に膨大な時間をとられてしまうので、効率的な勉強という視点からは極めてマイナスです。自分がそのような勉強をしていないか、気をつけましょう。
A学習能力の上げ方
 問題を「考えて解く」ということは大切ですが、いちいち全ての問題を考えて解いていては回答時間に間に合いません。無から考え出すというのはよほどの天才でなければ難しい作業だと思います。まして制限時間が決められていればなおさらです。大学入試の知識は「知っているか、知らないか」でほぼはっきりと二分でき、必要な知識を知らなければいかなる問題も解けないと言えるでしょう。ここで言う知識の中には問題と解法のパターンも含まれます。それをふまえた上で、問題と解法のパターンを知識として記憶し、いつ聞かれても答えられるくらいに頭の中で整理するのが効率的な勉強の仕方です。このことは、文系科目だけでなく理系科目についても言えます。例えば、私は数学では再頻出の問題について、問題から解法まで全て暗記しました。その問題数は数VCだけでも20問はあります。今となってはもっと憶えておけば良かったと思いますが、それでも模試で似たような問題によく出会い、成績アップにつながりました。やり方にもよりますが、「暗記数学」は有効な勉強法の1つです。
 勉強していく際に気をつけることは、繰り返し復習を行うことです。復習を行わなければ、記憶が定着しません。授業の演習や参考書の問題を1回だけで終わらせてしまうのではなく、聞かれたときにすぐに答えられるようになるまで復習することが大切です。
 また、苦手分野から先に手をつけることも大切です。苦手な理由として、知識が不足しているか復習が足りていないということが挙げられます。その場合、知識の蓄積や復習には時間がかかるので、時間に余裕があるうちに勉強を始めた方がいいでしょう。ただし、苦手な理由としてその科目がどうしても嫌いであるか、その教科自体が自分にむいていないということも考えられます。それらの問題を克服出来ないようであれば科目の変更も考慮する必要がありますが、いずれにせよ早い段階で手を打つためにも、苦手科目を率先して勉強することをお勧めします。
2)各科目について
ここでは、得意科目だった英語・数学・化学について書いていきたいと思います。
@英語
英語は『ポイント集A』を憶えることから始まります。全ページ憶えることをお勧めします。これを記憶するかしないかで英文読解力に大きな差が出ます。授業中に教わる「つなぎ」も必須です。いつでも図が書けるくらいまで憶えましょう。あとは、浅野先生の授業を理解して演習プリントを復習すれば英文解釈力が自然に身に付きます。なお、先生が口をすっぱくして言っていると思いますが、文法と熟語のドリルは早いうちに何回も繰り返し練習しましょう。私は夏の終わりまでに『ネクステージ(桐原書店)』を5回繰り返し解きました。この本は1冊で文法・熟語・発音・イディオムを勉強できるのでお勧めです。また、英単語の勉強は継続して行いましょう。私は『速読英単語(上級編)』『DUO』『ターゲット1900』で主に勉強しましたが、余力があれば『試験に出る英単語』『英単語はこう覚える(青春出版社)』『TOEFL対策必修単語集』も勉強するといいと思います。
A数学
 数学は、吉江先生の根本テキストTA・UBを繰り返し復習しましょう。頻出問題が網羅されています。VCが必要な人は吉江先生の微積プリント、角田先生のVCのプリントを徹底的に復習しましょう。
 私の数学の勉強法は、いわゆる「暗記数学」というやり方です。どういう方法かというと、教科書の練習問題レベルの初歩的な計算は問題を見て、1分経ってもまるで歯が立たないようならばさっさと答えを見ます。入試本番に近い実戦的な問題の場合は、5分程度解法の糸口を探っても解答の見通しが立たないのなら解答と解説を先に読み、もう一度解き直します。これを解答を見ずに問題だけ見て解けるようになるまで繰り返します。私が参考にした本には、問題数にして500〜1000問ぐらいを記憶するように書かれていました。模試や入試に出てくる問題は、自分が解いてきた問題とは少しずつ違った形で出てきますが、一通りの解法パターンを身につけていれば、そのような問題が出てきても対応出来ます。以上の過程は「解法パターンの習得」というもので、暗記数学にはさらに「解法の適用方法の習得」がありますが、私はそこまで出来ませんでした。それでも私の数学の最終的な偏差値は記述式で72でしたので、「解法の適用方法」は更に点数を稼ぎたい人向けのやり方だと言えるでしょう。この方法を知りたい人は、パソコンのホームページ『合格術を考える(2002年版,仮)』『Twilight Mirage』をご覧下さい。
B化学
 吉江先生の化学プリントを徹底的に憶えましょう。問題演習としては、『化学TBの演習(Z会)』の理論化学分野、吉江先生の有機プリント、夏期の『化学平衡テキスト』、後期の化学演習プリントを何度も復習しましょう。また、補助テキストとして『照井式有機化学』『照井式無機化学』『化学[無機]この整理法47で合格を決める』『化学[有機]この系統整理法65で合格を決める』が、補助問題演習として『精選化学IB・II問題演習(旺文社)』がお勧めです。


最後に 繰り返しになりますが、生徒の方は、巌丈の先生の言うことを素直に受け入れ,そしてすぐに実行しましょう。「先生方は,生徒の学力や性質をよく見て、各生徒に最適のアドバイスを与えてくれます。それを信じて実行することが,実は合格への最短距離だと思います」これは卒業生の山崎陶子さんの言葉ですが、私も同じ言葉を塾生の皆さんに送りたいと思います。巌丈の先生のアドバイスには、実は、受験だけでなく実社会に出てからも役立つノウハウが詰まっています。それを自分のものに出来るよう、真摯に勉強に励んで下さい。最後の最後に、いつも気持ちよく勉強できる環境を整えて下さっているマリさんに、感謝の気持ちを忘れないようにしましょう。